人生を効率的に進めることが最善だと考えている人がいる。

 

確かに、仕事や勉強を効率的に進めることは大切だ。効率化のテクニックを学ぶことは現代においてマストだ。ただ、長い人生において、すべてを効率化だけで話を進めていくことはお勧めしない。B’zの稲葉さんが『LOVE PHANTOM』で言うように「少しのズレも許せないせこい人間」になる。

 

そのことを説明するために『ぱふぱふしたいなら』という話をしたい。

断っておくが、大したオチは無い。

 

僕が小学校高学年の時、ドラゴンクエストというゲームがファミコンで発売された。RPGというジャンルが一般化されたのは、このゲームがきっかけになった。そして続編が出ると、子供たちの間では最短クリアでマウントを取る者が現れた。最短クリアは、効率よく経験値を稼ぎレベルを上げ、効率よくお金を稼ぎ、それを費用対効果の高いアイテムを買って、さらに効率よくレベルを上げていかなければならない。最短クリアのことを当時「早解き」と呼んでいた。RPGの早解きは確かに地頭が良くないとできない。だから、早解きにより自分はすごいとマウントを取る子供は間違っていないのかもしれない。

 

ただ、RPGの楽しみ方は有益でない情報にニヤリとさせられたり、自分の人生に投影し人生を鑑みることにもあるのではないか。ゲームのクリアには何の関係もない情報に耳を傾けることもゲームを楽しむために必要だと思う。「無用の用」なのである。ドラクエの中にその一例が「ぱふぱふして欲しいなら50ゴールド」だ。確かに、ぱふぱふをしてもらわなくても姫は助けられるし、ドラゴンも倒せるし、勇者にもなれる。しかし、自分の人生に置き換えて考えてほしい。

 

一流大学に入り大手企業に就職し、大きなプロジェクトを数々こなし、貯めたお金でマイホームを買う。それを人より早く達成するために友達や恋人との時間を削っていく。無駄という無駄を徹底的に省いた結果、何が待っているのだろうか。無用の用、無駄だと思っているものが実は無駄ではないということだ。

 

ドラゴンクエスト3のあるあるを一つ言おう。クリア直前にセーブデータが消えるのである。当時のファミコンソフトのセーブデータはちょっとした物理的ショックで消えてしまったのだ。データが消えた後、プレイヤーはどう思っただろう。

 

「どうせ消えてしまうなら、早解きなどせずにじっくり楽しめばよかった」だろうか。