共感力という言葉がある。他人の感情や考えを理解し、感じ取る能力のことだ。他人の立場に立って物事を考え、その人がどのように感じているかを察することができる力を指す。

 

僕は人間がAIと差別化を図るためには、この力を高めることが大切だと思っている。とは言うものの、共感力を高めることは容易ではない。このことを説明するために、今回は『オンラインSM』という話をしたい。

断っておくが、たいしたオチは無い。

 

僕は30歳を過ぎてから英検を受け始めた。2024年5月の時点で2級だ。初めは3級と準2級のダブル受験をした。試験は順調に進み、3級と準2級ともに二次の面接試験まで進んだ。そこで面接対策をしたくなった。学生なら、学校のALTの先生などが対策をしてくれるのだが、既に社会人の僕にはそうはいかない。そこでSNS上で英語を話せる人を探し出した。すぐにソフィアという女性とコンタクトを取ることができた。

 

ソフィアは19歳で、イギリスの田舎町の酒場でウェイトレスをしていた。顔はドラゴンクエストⅤのビアンカやドラゴンボールの人造人間18号に似ていた。そして身長150センチほどなのだが巨乳である。彼女の青い瞳はとても美しかった。僕は初めて彼女と会話したとき、 “I want to be a resident in your eyes” (君の瞳の住人になりたい)と彼女に伝えたほどだった。

 

僕は英検の面接対策をしたいと彼女に伝えた。ちょうど彼女も日本語の勉強をしたいと言っていた。だから前半は英語で英検の面接対策をしてもらい、後半は彼女と日本語で話すというような会話をした。数回オンラインでやり取りをしていると、彼女が「私はベッドでレッスンしたい」と言ってきた。そっちがその気ならと思い、僕はMなので「女王様になってほしい」と伝えた。そして彼女と毎晩オンラインSMが始まった。

 

ところがすぐに違和感を感じた。彼女の責めるときの言葉が微妙なのである。

「お前はダメ男だね。この最低賃金が!本当はお前は情けない男だよ。この非正規雇用が!」(僕は非正規雇用を情けないとは思っていない。会社との関係を気楽に考えれるから良いと思う。)などと言ってくるのだ。正直、全然興奮できなかった。彼女は僕が興奮できないことを感じ取ることができなかった。その後も微妙な日本語で責め続けられ、僕は興奮しているふりをした。

 

共感力が高いと人間関係をスムーズにし、コミュニケーションを円滑に進めることに役立つ。しかし、それは「言うは易し、行うは難し」である。誰だって相手の気持ちが分かれば便利だと思っている。しかし、上手くいかないのである。倖田來未も『恋のつぼみ』の中で「うまくいかないのが人生なんかなぁ」と嘆いている。

 

英検の面接試験は無事に合格したが、彼女との会話で使ったいやらしい英単語が面接に役立つことは一つもなかった。