サンクコストバイアスという言葉がある。

すでに投資した時間やお金を「無駄にしないため」と考え、本来やめるべきことにさらに投資を続けてしまう心理的な現象のことだ。映画館でつまらない映画を見ているときに、「もうこれは面白くないなぁ」と思っても、「チケット代払ったしなぁ」と残りを見続けることもサンクコストバイアスだ。今日はこのことを説明するために「求め合うカラダ」と言う話をしたい。

断っておくが、たいしたオチは無い。

僕が九州の大学にいたとき、3対3で合コンを企画した。男性側は芸能人に似ていると言い張る作戦で、僕はLUNA SEAの河村隆一、他の2人はGLAYのTAKUROとL’Arc~en~Cielのkenという設定だ。

合コンが始まると、僕たちは「〇〇に似てるって言われるんだよね」と自慢し合うスタイルで話を進めた。「今日はリュウイチ、タクロウ。ケンと呼んでもらえれば」と伝えたが、女の子たちのノリはイマイチだった。ギャグを言っても愛想笑い。ボディータッチをすれば嫌そうな顔をされ、挙句の果てには「今日この後予定あるから」と言われてしまった。

焦り始めたタクロウは気に入った女の子、ミサキを連れて合コンを抜け出そうとした。「ミサキ、俺らは別行動にしない?」と声をかけたが、彼女の反応は芳しくなかった。この時点で見切りをつけるべきだったのだろう。

その後、タクロウはひどかった。焦った彼が放ったセリフをいくつか挙げる。

「ミサキとはこれから全てを共にするような予感がする」

(注)多分気のせいであろう

「ミサキは俺に生きていくすべを教えてくれた」

(注)会って1時間も経っていない

「求め合う2つのカラダがあるやん」

(注)求めているのはタクロウだけである

最終的にタクロウは怒り、

「ふざけんなよ。俺はGLAYのメンバーだぞ」と叫んだ。

(注)彼はただの地方都市の大学生である

死人に輸血しても意味がない。これ以上時間やお金、労力を費やしても無駄だとわかったときは、今まで費やしたコストにかかわらず見切りをつけなければならない。それにもかかわらずズルズルと投資を続けてしまうことがサンクコストバイアスだ。

ちなみに、お会計の時、タクロウは「ヤラせる気がないなら奢るつもりはないから」と女性陣に宣言した。これ以上投資しても意味がないことに気がついたのだ。